これは不動産関連の法律や知識を盛り込んだミニドラマです。
取っつきにくいイメージの法律や知識をできるだけ分かりやすく説明するためのものです。
なお、このドラマの内容は全てフィクションです。
都心のマンション市場を歩くと、時折感じる不思議な感覚がある。煌びやかな新築マンションが次々と建設される中、実はその陰でひっそりと、しかし確実に価値を積み上げているのが中古マンションだということに気付く瞬間だ。
ある日、友人のユウタとカフェで話していた時のこと。彼は都心の不動産に詳しい人物で、特にマンション市場には並々ならぬ知識を持っている。「最近、マンション相場がどう動いているか知ってるかい?」とユウタが切り出した。
「もちろん、ちょっとはね。新築マンションはいつも話題になるよね。でも、実際どうなんだろう?」と私が返すと、ユウタは少し笑って、「新築マンションは、言わば表向きの顔だ。土地や建材のコスト、それに広告宣伝費がしっかり加えられて価格が決まるんだ。だから、需要が高まれば、その価格はほぼそのまま契約されることが多いんだよ」と語り始めた。
ユウタの言葉を聞いて、私は新築マンションの輝かしいイメージの裏にある現実を思い浮かべた。確かに、都心の高級エリアでは、需要が高く、購入希望者が殺到する。結果、販売価格は上がり続け、その一方で新たに供給される物件はどんどん減っているのだ。
「でもね」とユウタは続けた。「本当に面白いのは中古マンションなんだよ。」彼の目が少し輝いたのを見逃さなかった。彼によれば、中古マンションは住んでいる人々が自らの判断で売りに出すもの。そのため、周辺の物件の価格動向を敏感に反映するというのだ。つまり、市場の需給に合わせて価格が決まるため、リアルタイムでその価値が分かるということ。
私は興味をそそられ、さらに話を聞いた。ユウタは、東京都内のマンション市場の大きさが新築の3〜4倍にもなること、そしてその結果、相場の変動が比較的小さく安定していることを教えてくれた。なるほど、中古市場はその規模が大きいからこそ、価格が急激に変動することなく、安定した価値を保ち続けるのだと納得した。
さらに、ユウタは私に一つのデータを紹介してくれた。日本不動産研究所の「国際不動産価格賃料指数」の調査によると、東京と大阪のマンション価格がわずか半年で1.5%も上昇し、世界の主要都市15カ所の中でトップを記録したという。特に、利便性の高いエリア、例えば六本木のような場所では、土地の供給が少なく、新築マンションの建設が難しくなっているとのこと。
その結果、国内外の投資家たちは新築市場から中古市場へと目を向け始めた。転売や家賃収入を目指す投資マネーが、中古マンションの市場に流れ込んでいるのだ。
カフェの窓から外を見れば、ビルの谷間に立ち並ぶマンション群が見える。その中に、新築の輝きを放つ建物もあれば、少し落ち着いた色合いの中古マンションも存在する。だが、そのどちらもが同じように、この街の価値を支えていると感じた。
ユウタとの会話を思い返しながら、私は新築と中古、両方のマンションが持つ価値について深く考えた。見た目の新しさだけが全てではない。むしろ、市場の動きに敏感に反応し、長くその価値を保つ中古マンションこそが、真に魅力的な存在なのかもしれない。
私たちの暮らす都市、その中で繰り広げられる不動産市場のドラマは、表面だけでは見えない深い物語を持っているのだ。