これは不動産関連の法律や知識を盛り込んだミニドラマです。
物語形式で、難解に思われがちな法律や知識を出来るだけ分かりやすく伝えています。
なお、このドラマで出てくる登場人物、団体等はフィクションです。
夏の終わり、太陽が西の空に沈みかけたころ、若いカップルの健太と彩香は、将来のマイホーム探しを続けていた。新しい生活の拠点を見つけるため、休日にはさまざまな物件を見て回り、理想の家を探し求めていた。しかし、この日は少し特別だった。先日、ニュース番組で「ハザードマップ」という言葉を聞き、それが気になっていたからだ。
「最近、集中豪雨のニュースをよく見るよね」と健太がつぶやく。実際、8月7日の夜、関東地方では激しい雨が降り、埼玉県川越市などには「記録的短時間大雨情報」が発表されていた。東京でも猛烈な雨が観測され、いつどこで災害が起こるかわからないと感じさせる出来事だった。
その日、二人は番組のアドバイスに従って、ハザードマップを手に取ることにした。地元の役所でマップをもらい、またウェブサイトでも同じ情報を確認した。番組内で言っていた通り、地図には洪水のリスクが色分けされており、万が一の浸水が起こった場合にどこまで水が押し寄せるのかが一目でわかるようになっていた。
「このあたりは川が近いから、もし堤防が決壊したら浸水するかもしれないね」と彩香が言う。二人は、将来の家がどれほどの水害リスクにさらされているかを慎重に確認した。特に河川が多い地域では、いくつものハザードマップが公開されており、それぞれの河川が氾濫した場合の予想図を比べることができた。
次に、番組内で言及していた「内水ハザードマップ」に目を向けた。これは洪水とは異なり、都市部で大雨が排水能力を超えた際に発生する浸水リスクを示すものだ。内水氾濫と呼ばれるこの現象は、低地だけでなく高台でも発生する可能性があり、マンホールから水が噴き出したり、下水路が溢れたりして道路や敷地が浸水するという。
「内水のハザードマップを見て驚いたよ。洪水ハザードマップでは安全だった場所が、内水のリスクが高いことがあるんだ」と健太が言う。彩香も頷き、「高台にあるからといって安心できないんだね。谷になっている場所だと、水が集まりやすいから気をつけないと」と続けた。
二人は、歩いてみても気づかないような浅い谷でも、内水の影響を受ける可能性があることを学んだ。この情報は、ただ地図を見るだけではなく、実際に現地を歩いて確認することの重要性を感じさせた。
そして、最後に確認したのは「地形分類」や「揺れやすさマップ」だ。これらの地図は、地震リスクを示すもので、水害リスクが高い場所は、地震でも揺れやすいという事実を教えてくれた。国土交通省の「重ねるハザードマップ」を使い、二人は気になる土地の成り立ちを確認した。その土地がどれほど地震に対して脆弱かを知ることで、家選びの重要なポイントをもう一つ加えることができた。
「あの日の大雨や地震を考えると、本当に備えが必要なんだと感じるよ」と健太が真剣な表情で言うと、彩香も静かに頷いた。二人は、これから家を選ぶ際には、こうしたリスクをしっかりと考慮し、安全で安心できる場所を選ぶ決意を新たにした。
未来の家を守るために、ハザードマップを片手に歩いた二人の旅は、まだ始まったばかりだ。しかし、その一歩一歩が、これからの生活を守る大切な備えになるだろう。二人は、今日学んだことを胸に刻み、家探しの旅を続ける決意を固めた。