不動産売却を検討されている高齢者のご家族にとって、成年後見人の制度は大きな不安材料となるでしょう。
特に、親族が成年後見人になった場合、不動産売却の手続きが複雑になるのではないかと心配される方も多いのではないでしょうか。
この記事では、成年後見人がついた親族の不動産売却について、居住用と非居住用で異なる手続きを解説します。
成年後見人による不動産売却:居住用と非居住用で異なる手続き
成年後見人がついた親族の不動産を売却する場合、居住用と非居住用では、必要な手続きが大きく異なります。
それぞれのケースにおける注意点や具体的な手続きを解説していきます。
1: 居住用不動産の売却
居住用不動産の売却は、家庭裁判所の許可を得なければ売買契約を締結できません。
これは、判断能力が低下した本人の利益を保護するためです。
たとえば、本人が住んでいる自宅を勝手に売却されてしまうと、住む場所を失ってしまう可能性があり、本人の生活に大きな影響を与えてしまうでしょう。
そのため、居住用不動産の売却には、以下の手続きが必要になります。
・売買契約の締結
・家庭裁判所への不動産処分許可の申立て
・許可が下りた後に、決済・引き渡し
家庭裁判所は、本人の利益を保護するため、売却価格や買主の身元などを厳しく審査します。
仮に、許可を得ずに売買契約を締結した場合、契約は無効となる可能性があり、トラブルに発展する可能性もあります。
2: 非居住用不動産の売却
非居住用不動産の場合、家庭裁判所の許可は必要ありません。
本人が住むわけではないため、居住用不動産のように保護する必要がないからです。
ただし、後見監督人が選任されている場合は、後見監督人の同意が必要となります。
基本的には、成年後見人の判断で売却できます。
そのため、買主を見つけ、売買契約を締結し、決済や登記を行えば売却は完了です。
3: 居住用と非居住用の区別
居住用と非居住用を区別する方法は、住民票上の住所を現在または過去に置いていたかどうかが一つの判断基準となります。
売却しようとしている不動産が、本人の居住する土地・建物であれば、居住用不動産です。
また、現在は住んでいなくても、過去に住んでいた場合も、居住用不動産となります。
成年後見制度の種類と不動産売却への影響
成年後見制度には、「任意後見」と「法定後見」の2種類があります。
それぞれの制度の特徴と、不動産売却への影響について解説していきます。
1: 任意後見
任意後見は、本人が判断能力が低下する前に、後見人との間で契約を結び、実際に判断能力が低下してから契約が効力を発揮する制度です。
本人が、将来判断能力が低下した場合に備え、信頼できる人に自分の財産管理や生活の世話などを任せたいと考えた時に、この制度を利用できます。
任意後見契約では、後見人の権限や義務、後見の開始時期、後見期間などを事前に決めておくことができます。
そのため、本人の意思が最大限に尊重されるのが特徴です。
不動産売却に関しては、任意後見契約で事前に売却を許可しておけば、後見開始後もスムーズに売却を進めることができます。
2: 法定後見
法定後見は、本人の判断能力が低下した後に、家庭裁判所によって後見人が選出され、後見が始まる制度です。
本人の判断能力の程度によって、「後見人」「保佐人」「補助人」のいずれかが選出され、それぞれの権限が異なります。
不動産売却に関しては、法定後見の場合は、家庭裁判所の許可が必要となります。
後見人が、本人の利益を損なうような売却をしないよう、裁判所が厳しく審査を行います。
まとめ
成年後見人による不動産売却は、居住用か非居住用かで手続きが大きく異なります。
居住用不動産の売却は、家庭裁判所の許可が必要で、手続きも複雑になります。
一方、非居住用不動産の売却は、許可は必要ない場合が多いです。
また、成年後見制度には、任意後見と法定後見の2種類があり、それぞれの制度で、後見人の権限や手続きが異なります。
不動産売却を検討する際には、居住用か非居住用か、そして、成年後見制度の種類をしっかりと確認し、適切な手続きを進めましょう。