長年住み慣れたマイホームを手放す際には、様々な感情が入り混じり、売却価格や税金のことなど、気になることも多いはずです。
その中でも、売却時に発生する税金である譲渡所得は、多くの人が頭を悩ませるポイントの一つでしょう。
特に、減価償却の計算方法は複雑で、売却益を減らすために適切な計算を行うことは、スムーズな売却を進める上で非常に重要です。
この記事では、不動産売却における減価償却の仕組み、経過年数との関係性、計算方法を解説します。
不動産売却と減価償却・経過年数との関係性
不動産売却で発生する譲渡所得は、売却価格から取得価格と諸費用を差し引いた金額に税金がかかります。
この取得価格には、減価償却によって算出された金額が含まれるため、減価償却を正しく理解することは、売却時の税金対策に不可欠です。
1: 減価償却とは
減価償却とは、建物や不動産などの資産が年数が経過することで価値が減っていくことを会計上認識するための処理です。
具体的には、取得した資産の価格を、法律で定められた耐用年数で分割し、毎年一定額を費用として計上していくことで、資産価値の減少を反映させます。
2: 減価償却の必要性
減価償却は、事業用不動産では毎年の確定申告で、居住用不動産では売却時の確定申告で計算する必要があります。
事業用不動産では、減価償却費を計上することで、不動産所得を減らし、税金負担を軽減することが可能です。
一方、居住用不動産では、売却時に減価償却費を計算することで、譲渡所得を減らし、税金負担を軽減することができます。
3: 減価償却の計算方法
減価償却の計算方法は、建物などの資産の種類や耐用年数によって異なります。
一般的には、定額法と呼ばれる方法を用い、毎年一定額の減価償却費を計上します。
4: 減価償却に影響を与える要素
減価償却に影響を与える要素はいくつかあります。
まず、建物の構造によって耐用年数が異なります。
例えば、木造の建物の耐用年数は22年、鉄筋コンクリート造の建物の耐用年数は47年と、構造によって耐用年数は大きく異なります。
また、建物の築年数も減価償却に影響を与えます。
築年数が古いほど、減価償却費は大きくなり、譲渡所得は小さくなります。
不動産売却後の減価償却費の計算方法
1: マンションの建物購入代金
不動産の建物購入代金は、売買契約書に記載されている建物部分の価格です。
土地代は含まれないため、注意が必要です。
もし、売買契約書に建物部分のみの価格の記載がない場合は、建物部分のみに課税される消費税をもとに逆算して価格を算出することができます。
計算式は、以下の通りです。
・建物部分のみの価格=(消費税額÷消費税率)+消費税額
例えば、消費税額が60万円、消費税率が3%の場合、建物購入代金は(60万円÷3%)+60万円=2,060万円となります。
2: 償却率
償却率は、建物の構造によって決まる、1年で低下すると考えられる建物部分の価値です。
例えば、木造は0.031、木骨モルタル造は0.034、金属造は骨格材の肉厚によって異なり0.020~0.036です。
3: 経過年数
経過年数は、マンションの購入から売却までの期間です。
6か月以上の期間を1年として計算し、6か月未満の期間は切り捨てます。
例えば、マンションを購入してから7年7か月後に売却した場合、経過年数は8年となります。
4: 減価償却費の計算
減価償却費は、以下の計算式を用いて計算します。
・減価償却費=不動産の建物購入代金 × 0.9 × 償却率 × 経過年数
例えば、建物購入代金が2,000万円、償却率が0.015、経過年数が10年の場合、減価償却費は次のようになります。
・減価償却費=2,000万円 × 0.9 × 0.015 × 10年=270万円
5: 減価償却費の反映
減価償却費は、売却時に計算される譲渡所得から差し引かれます。
そのため、減価償却費を計算することで、譲渡所得を減らし、税金負担を軽減することができます。
まとめ
不動産売却における減価償却は、売却益を減らし、税金負担を軽減するために重要な要素です。
減価償却の仕組みを理解し、適切な計算を行うことで、売却時の税金対策に役立てることができます。
不動産売却を検討する際は、減価償却についてしっかりと理解し、税金対策を事前に検討しておくことが重要です。