※ 2023/07/30 加筆あり
隣の家の庭の木が自宅の敷地に侵入することで、被害を受けている方は少なくありません。
自分の敷地に侵入している部分は自身で処分しようと思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、人の家の木を勝手に切ってはいけません。
今回は、隣家の庭木に困っている場合の対処法をご紹介しますので、ぜひ参考にしてみてください。
隣家の庭の木の被害が原因で発生しやすいトラブルとは?
隣の家の庭木が原因となって発生するトラブルは、意外に多いです。
ここでは3つのケースについて解説します。
1つ目が、隣家の枝や葉・根っこが自宅の敷地内に侵入することによる被害例です。
樹木は枯れるまで成長し続けるので、植えた当時は小さくても、年月を重ねるにつれて大きくなっていきます。
そして、気付くと隣家の敷地内や近接道路まで伸びてしまう事態が頻発します。
成長して大幅に伸びている枝は、隣の家の建物の一部や駐車中の自動車を損傷してしまっている場合もあります。
また、枝葉が隣家に生い茂ることにより、隣家の日当たりを遮断してしまうことも考えられます。
さらに、枝や葉が道路の方向に伸びてくると、通行人の妨げになったり、視界を遮ることで交通が危険になったりする可能性もあります。
2つ目が、落ち葉によって起こる被害例です。
落葉樹の場合は、ある季節になると大量の落ち葉が毎年隣家に落ちることになります。
落ち葉は積み重なり、それらが雨にぬれると滑りやすくなって大変危険です。
また、葉っぱが溝にたまることで、溝が詰まってしまう可能性もあり、隣家からの落ち葉の掃除に追われてしまう方も少なからずいらっしゃいます。
3つ目が、虫が発生する例です。
樹木には虫が発生するケースも多いです。
木によって発生する虫の種類は違いますが、時には人や家に害を及ぼす虫が大量に発生し、トラブルになることもあります。
特に、隣地の木で繁殖した害虫が自宅の庭木に移動して被害を受けたり、虫が外で乾かしている洗濯物についたり、はたまた人が刺されてしまったりするなどの被害は甚大です。
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人の家の木を勝手に切るのはNG!正しい対処方法とは?
「敷地内に入ってきた枝葉を自分でさっさと処理したい」という気持ちになることもありますよね。
しかし、敷地内に入ってきた樹木とは言えど、隣の家の所有物です。
勝手に切ってよいのか分からない場合もありますよね。
このような場合、正式な対処はどうすべきか、法律を見てみましょう。
民法233条では隣の家の枝が自宅の敷地内に入ってきた場合でも、所有者本人の許可を得ないままに枝を勝手に切ることは許されていません。
相談なしに勝手に切ってしまうと、権利の侵害として損害賠償請求がされたり、刑法上の器物損壊罪で訴えられたりする恐れもあります。
このケースでは、枝のせんていを隣の家の人に依頼するのが良いでしょう。
依頼することによって円満に解決できるケースが多いです。
ただし、枝は勝手に切れませんが、根は侵入された場合には切除できます。
このように、枝葉と根で対処方法が変わってくる理由としては、複数の説があります。
1つ目は、根の一部を切除したとしても木が枯れることはあまりないが、枝を切ると木が枯れる可能性が高くなるからという理由や、根の方が枝葉に比べて成長が大きく、家に対する被害が大きくなるからという理由があります。
どのような理由にせよ、法律上において、根っこは切除してもよいが、枝葉を許可なく切ることは違法である、という事実をしっかりと理解しておいてくださいね。
つまり、枝葉が自宅敷地内にいかに侵入してきても、勝手に切ることは法律に反します。
そのため先ほどもご紹介したように、隣人の枝や葉を処理したい時には、対象となる木の所有者に剪定や伐採を求めるしかありません。
所有者は、隣地の状況に関して無自覚だったという場合も多いです。
ご近所トラブルに発展したくないからと言わない方も多いのですが、被害が大きくなると解決より難航する場合もあるため、あくまでも冷静に事情を説明しましょう。
しかし、話し合いが進まない場合には、裁判所の調停制度も利用できます。
調停は、裁判所を通して行う話し合いの一種であり、調停員が間に入ることで、合意に向けた話をスムーズに進められます。
この調停で話し合いを進められた場合は、その話し合いの内容に基づいて相手が剪定などの対処を取ってくれるでしょう。
ただし、調停はあくまで話し合いなので、相手が応じなければ始められません。
裁判所に呼び出しても、隣人の方が出頭しないケースもあります。
その場合は調停が成立しないため、枝の対処もできません。
調停で解決ができない場合には、侵入してきた枝の切除を求める訴訟を提起します。
この訴訟に勝ったら、勝訴判決に基づき枝葉の切除が強制執行されます。
この裁判を成功させるには、枝葉が敷地内に侵入した事実や侵入による被害や損害の恐れについて、被害側が立証する必要があります。
立証には、枝葉と被害の実態を鮮明に写真に写すなどの工夫が必要です。
このように、樹木の所有者が把握でき連絡が取れる場合は、何らかの手段で対応できます。
しかし、最近は隣地の所有者が不明であるケースもあり、誰も住んでいない空き家の急増も社会問題となっています。
このように、樹木の所有者がわからない場合にはどのように対処すべきなのでしょうか。
このような場合、隣地の住所地の不動産登記を取得することで、土地の所有者を把握できます。
具体的には、まずは法務局で不動産登記を申請しましょう。
ただし、登記上の所有者がすでにご存命でなかったり、所在不明で連絡がつかなかったりするケースも多いです。
相手の居場所が把握できなければ、調停も訴訟も不可能です。
この場合は、不在者の財産管理人の選任の申し立てを家庭裁判所に行います。
そして、裁判所から選ばれた財産管理人に、枝葉の対処を要求しましょう。
【※ 加筆 2023/07/30】
令和5年4月1日の民法改正により、以下のいずれかの場合には、越境された土地の所有者自らが枝を切り取ることができるようになりました。
(1) 竹木の所有者に枝を切除するように催告したにも関わらず、相当の期間内に切除しないとき。 (この時の「相当の期間」とは一般的に大体 2 週間くらいだそうです)
(2) 竹木の所有者を知ることができず、またはその所在を知ることができないとき。(電話しても出ないという程度では足りず、住民票などの公的記録の確認や、現地調査などを実施した上でもなお不明というくらいの条件は必要のようです)
(3) 急迫の事情があるとき。
(民法233条法改正部分より)
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ご自身が隣家に迷惑をかけないためにできることをご紹介!
ここからは、ご自身が隣の家に迷惑をかけないためにできることを3つご紹介します。
「出来ていないかも」と感じる箇所があれば、意識して手入れしてみてくださいね。
1つ目が、枝の剪定・伐採です。
先ほどのご紹介の通り、隣の家との敷地の境界線付近に植えられた植物は、成長するにつれ隣家にはみ出してしまう可能性があります。
木の見た目を保つだけでなく、近所に迷惑をかけないためにも、こまめに枝を切ってメンテナンスをするのがおすすめです。
2つ目が、落ち葉の掃除です。
特に、秋は落ち葉が増える季節なので、気づかないうちに隣の敷地に落ち葉が大量に舞い込んでしまう場合もあります。
落ち葉が原因で、隣家の排水溝や雨どいを詰まらせてしまうことの無いように、こまめに掃除をしましょう。
3つ目が、害虫の予防です。
庭木が害虫の付きやすい種類だと、いつの間にか隣家にも迷惑をかけてしまう可能性があるので、殺虫剤などで事前に対策をするのも重要です。
また、庭木を放っておくと、枝が密集して風通しが悪化し、じめじめした環境を好む虫が集まりやすくなります。
そういった環境を防止するため、害虫予防の観点でも適度な剪定は必要になるでしょう。
まとめ
今回は隣家で起こりがちなトラブルや正しい対処法、迷惑をかけないためにできることについてご紹介しました。
また、ご自身が隣の家に迷惑をかけないためにできることについてもご紹介しました。
その他ご質問や相談等ありましたら当サイトまでお気軽にお問い合わせください。