住宅を購入する際、ほとんどの方が住宅ローンを利用することになります。
ローンで借り入れたお金は毎月少しずつ返済していくことになりますが、何らかの理由によって返済が滞ってしまう可能性も考えられます。
そのようにローンの返済が滞ると、せっかく購入した住まいが競売にかけられるおそれが出てきます。
今回は、そうした不動産の競売について、競売が行われる理由や流れ、デメリットを解説します。
不動産の競売とは?
不動産競売とは、裁判所の権力により、強制的に不動産の売却を進めるものです。
特に、住宅ローンの支払いが滞った際には、債権者である金融機関が裁判所に申し立てを行い、その申し立てが正当と認められると、競売が開始されます。
このような手続きが可能となる背景には「抵当権」という制度があります。
抵当権は、金融機関が不動産を担保として、住宅ローンが払えなくなった場合に、その不動産を売却して返済を求めるための保険のようなものです。
そして、この抵当権は住宅ローンが完済されるまで解除できません。
つまり、住宅ローンが完済されないまま返済が滞ると、抵当権に基づいて競売が行われ、不動産が売却されてしまう結果となるのです。
競売における売却価格は、入札によって決定されます。
しかし、売り出し時の価格は市場価格の6割程度に設定されることが多く、その結果、不動産が本来の価値よりも低い価格で売却されるリスクが高まります。
さらに、新たな所有者が決まると、債務者は強制的に立ち退くこととなり、その後も残債の支払いを続ける必要があります。
このような競売のリスクを考慮すると、債務者にとっては事前の対策が非常に重要となります。
適切な対策を取ることで、最悪のシナリオを回避することが可能となるでしょう。
家が競売にかけられる理由は?
1.ローンの滞納
ローンの滞納は、競売に至る最も一般的な原因です。
住宅ローンや消費者金融ローン、事業ローンなど、返済が滞ると債務不履行とされます。
この状態が続くと、債権者は裁判所に申し立てを行い、競売プロセスが始まる可能性があります。
特に住宅ローンの場合、抵当権が設定されているため、滞納が続くと競売のリスクが高まります。
2.相続問題
相続においても競売のリスクが存在します。
相続者間で意見が一致しない場合、裁判所が介入して競売が行われることがあります。
この場合、競売で得られた資金は相続者間で分配されます。
相続問題は、しばしば家族間の対立を引き起こすため、早めの協議と合意が求められます。
3.税金の滞納
固定資産税や都市計画税の滞納も、競売の原因となることがあります。
数年にわたる滞納が続くと、不動産が差し押さえられる可能性があります。
このようなケースでは、公売と呼ばれる手続きが行われます。
税金の滞納は、多くの場合、オーナーの財政状況が厳しいことを示しているため、注意が必要です。
競売の流れ
競売が実際に行われる流れは場合によって多少異なりますが、概ね以下のような流れで進められます。
1.一括返済の請求
ローンの滞納が続くと、債権者から一括返済が求められます。
債権者から一括返済が求められた瞬間、分割返済の権利は消失し、債務者は一括で返済しなければならなくなります。
保証会社が関与している場合、その会社が債務者に代わって返済を行い、債務者は今度は保証会社に対して返済義務を負います。
この段階で返済ができないと、次のステップへと進みます。
2.競売開始の通知
裁判所から「不動産競売開始決定通知」が届きます。
この通知が届いた瞬間、競売のカウントダウンが始まります。
3.現況調査の実施
裁判所の執行官と不動産鑑定士が訪れ、物件の状態を調査します。
この調査は拒否できず、その結果が評価書として裁判所に提出されます。
4.入札と情報開示
競売開始から数ヶ月後、入札の通知が届きます。
この通知には、入札期間や開札日、売却基準価格などが明記されています。
5.売却と所有権の移転
最終的に落札者が決まり、代金が納付されると、物件の所有権が新たな持ち主に移されます。
この時点で、債務者は物件を明け渡さなければなりません。
競売にかけられるデメリット
低価格で取引される
競売物件は市場価格よりも大幅に低い価格で取引されることが多いです。
競売物件は購入者側にもリスクがあるため、安価で落札される傾向があるのです。
この低価格での取引は、債務者にとっては大きな損失となります。
具体的な相場としては、市場価格の6~7割程度での売却が一般的です。
この価格差は、債務者が返済しなければならない残債に直接影響を与え、経済的な負担が増大します。
さらに、この低価格での取引は、購入者側にもリスクがあるため、競売物件に対する需要が限定され、価格がさらに下がる可能性もあります。
このような状況を避けるためには、競売が始まる前に、債権者との交渉や他の方法での売却を検討することが重要です。
引っ越し時期を決められない
通常の売買では引っ越しのタイミングを調整できますが、競売の場合はその自由がありません。
代金が支払われた瞬間、退去しなければならないのです。
この制限は、生活の計画を大きく狂わせる可能性があります。
特に、子供の学校や職場との距離、新居の準備など、多くの要素が絡むため、計画的な移動が困難になります。
こうした弊害があるため、万が一競売が始まったら余裕をもって引っ越しを済ませておくべきだと言えます。
また、所有権が移転された家に住み続けると、不法占拠となり、強制退去のリスクが高まります。
このような状況を避けるためには、競売が始まる前に、債権者との交渉や他の方法での売却を検討することが重要です。
プライバシーが守られないおそれがある
競売にかけられると、その情報は公開されます。
近隣の住民や不動産業者が物件を訪れることもあり、プライバシーが侵害される可能性が高まります。
特に、強制退去が行われる場合、その事実は広く知れ渡る可能性があります。
物件情報が裁判所やネット上で公開されるため、購入希望者や不動産会社などが現地を訪れたり、近隣に状況を聞いたりすることがあります。
このような状況は、社会的な評価や信用にも影響を与える可能性があります。
そのため、プライバシーの保護には特に注意が必要です。
競売が始まる前に、債権者との交渉や他の方法での売却を検討することで、このようなリスクを最小限に抑えられます。
追加の費用負担がある
競売には手数料や登録免許税、予納金など、多くの追加費用が発生します。
これらの費用は債務者が負担する必要があり、負担がさらに増大するのです。
約100万円ほどの費用が発生する場合もあり、これは債務者負担となります。
このような追加費用は、すでに経済的に厳しい状況にある債務者にとって、さらなる重荷となります。
費用の詳細については、申立手数料、郵便切手代、登録免許税、予納金などがあります。
これらの費用は、競売の手続きが進むにつれて発生するため、事前に確認しておくことが重要です。
競売が始まる前に、債権者との交渉や他の方法での売却を検討することで、このようなリスクは最小限に抑えられるでしょう。
まとめ
今回は、家が競売にかけられる理由と競売の流れ、デメリットについて解説しました。
家が競売にかけられることには、「低価格で取引される」「引っ越し時期を決められない」「プライバシーが守られないおそれがある」といったデメリットがあります。
せっかく購入した住まいが競売にかけられることがないよう、家を購入する際には無理のないローンの返済計画を建てることが何よりも重要です。
これから家を購入するという方は、競売の存在についても認識しておき、適切なローンを組むようにしましょう。