家や土地などの不動産を売る際に気になることといえば、「いくらで売れるのか」ということです。
せっかく売るなら、誰しもができるだけ高く売りたいと考えることでしょう。
不動産を売る際に価格に影響を与える要素としては多くのことが挙げられますが、例えば土地の安全性が挙げられます。
斜面や高低差のない安全な土地は比較的高く売れやすく、反対に斜面や高低差の大きな土地は、その土地が災害リスクを持っているがゆえに、高く売ることはやや難しくなります。
今回は、そのようなリスクを持っている土地である「急傾斜地崩壊危険区域」や「土砂災害警戒区域」について解説します。
急傾斜地崩壊危険区域とは?
急傾斜地崩壊危険区域とは、「崩壊するおそれがある急傾斜地で、崩壊すると相当数の居住者などに危害が生ずるおそれがあるところについては、急傾斜地の崩壊を助長・誘発する行為を制限する区域」のことです。
簡単に言うと、「崩壊のリスクが懸念される、傾斜がきつい土地」ということです。
急傾斜地崩壊危険区域に指定されると、崖崩れによる被害を防止したり軽減したりするために、崖崩れのリスクが高まるような行為が禁止されます。
また、排水設備や擁壁など、がけ崩れを防ぐために必要な施設の設置や工事の実施が義務付けられるほか、住宅やマンションを建築する場合は都道府県知事の許可が必要になります。
このように、急傾斜地崩壊危険区域では、周辺住民の安全を確保するために、さまざまな規制や義務が定められているのです。
土砂災害警戒区域とは?
土砂災害警戒区域とは、土砂災害防止法に基づいて指定された「土砂災害のおそれがある区域」のことで、「イエローゾーン」とも呼ばれています。
土砂災害警戒区域では、土砂災害が発生した場合、住民の生命または身体に危険が生じるおそれがあるとされており、警戒避難体制を特に整備すべき区域となっています。
土砂災害は自然現象ということもあり正確な予測が難しいため、このような区域があらかじめ設定され、警戒体制が整えられているのです。
土砂災害特別警戒区域に指定されている土地は、不動産取引において宅地建物取引会社が「この土地は土砂災害警戒区域である」という旨を記載した重要事項説明書を発行し、説明を行う必要があります。
ただし、次に紹介する「土砂災害特別警戒区域(レッドゾーン)」とは異なり、区域内であっても開発行為や建築物等建築行為の制限はありません。
土砂災害特別警戒区域はよりリスクが高い
「土砂災害特別警戒区域」は「レッドゾーン」とも呼ばれる区域で、土砂災害が発生した場合、「建築物に損壊が生じ、住民の生命または身体に著しい危害が生じるおそれがある区域」であるとされています。
前述の土砂災害警戒区域(イエローゾーン)とは異なり、一定の開発行為や居室を有する建築物の構造規制がされています。
より土砂災害のリスクが大きいため、より厳しい制限や義務が与えられているのです。
区域に指定されているかどうかはどうやって確認する?
ある土地が土砂災害警戒区域や土砂災害特別警戒区域に指定されているかどうかは、ハザードマップから確認できます。
ハザードマップは市町村の窓口で配布されているほか、各自治体のホームページからも確認できます。
ホームページであればネット上で簡単に確認できるため、手元にハザードマップがないという場合でも心配はありません。
また、不動産取引の際にはその土地が土砂災害警戒区域に該当するかどうかが記載された重要事項説明書が交付されるため、その書類があればそこからも確認可能です。
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土砂災害のリスクがあると土地評価が下がる?
ハザードマップ上でリスクのある土地でも地価は下落しない
多くの方が、「土砂災害のリスクがある土地は評価が下がりそう」と思われるかもしれませんが、必ずしもそうとは限りません。
一般的には、その土地がハザードマップ上で災害のリスクがある区域に含まれていても、地価は下落しないと言われています。
なぜなら、土地がハザードマップに含まれていることや災害のリスクがあることは、あくまでも買い手の問題であり、不動産自体の価値には影響しないためです。
もちろん、大きな災害があった場合に一時的に土地の価値が下がることはあるものの、数年が経過すると価格は元通りになる傾向にあります。
売却が難しくなる場合もある
前述の通り、ハザードマップ上で災害のリスクがある区域に含まれている土地でも地価は下落しないと言われていますが、一方で売却のしやすさに全く関係しないというわけでもありません。
例えば、ハザードマップ上での警戒レベルが低い土地と高い土地とでは、同じような土地でも買い手の見つかりやすさに違いが出る可能性があります。
買い手からすれば、「なるべく災害リスクの低い土地に住みたい」と思うことは当然であるため、致し方ないことでしょう。
また、ここまでハザードマップについて述べてきましたが、1つ重要なポイントがあります。
それは、ハザードマップでの位置づけよりも、実際に被害があったかどうかの方が重要であるということです。
例えば、過去に土砂災害の被害を実際に受けた地域では、そうでない地域に比べて土砂災害リスクが高いと考えられます。
また、同じような災害を防ぐための工事が十分に行われていない場合、同様の被害が起こる可能性が高いと言えます。
こうした観点から、災害のリスクがある土地はどうしても売却が難しくなってしまう側面もあると言えるのです。
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土砂災害のリスクがある土地を売る際のポイント
告知義務をきちんと果たすこと
土砂災害警戒区域(イエローゾーン)に指定されている不動産を売却することは可能ですが、売買の際には、売主が買主に対して「その土地が土砂災害警戒区域に入っている不動産である」ということを告知する必要があります。
特に売買に関して制限はないものの、告知義務は法律によって定められている義務であるため、正しい手順を踏んで正しく行うことが求められます。
ただし、土砂災害特別警戒区域(レッドゾーン)の場合は、売買契約を結ぶにあたって県知事の許可が必要となるなど、告知義務以外にも必要な手続きが増えるため注意が必要です。
土砂災害特別警戒区域では、もとから指定されているのを知っていて居住している人は少なく、居住中に指定されたというパターンが多いため、その点についても要注意です。
売却価格が低くなることは覚悟する
土砂災害警戒区域は災害リスクが明示されているため、区域に指定されていない物件に比べるとどうしても売却価格は低くなりがちです。
そのため、売却活動を始める前に、そのことをある程度覚悟しておくことが大切です。
周囲の環境やアクセス、商業施設の充実度など、不動産の価格は多くの要因から決まるため必ずしも災害リスクがあるからといって売却価格が低くなるとは限りませんが、反対に必ずしも価格に影響しないとも限りません。
「良い物件だからきっと高く売れるだろう」とは思わず、安く売れる場合を含めて、いくつかのパターンの想定をしておくことをおすすめします。
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まとめ
今回は、急傾斜地崩壊危険区域や土砂災害警戒区域などの災害リスクのある土地について解説しました。
災害リスクがある土地は、利用や売買において様々な制限や義務が課せられる場合があります。
「どのような区域の指定がされているか」「どのような制限があるのか」といったことは売却活動の進め方や売却価格などに大きく影響するため、そういった基本的な情報は確実に正しく把握するようにしましょう。
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