親から農地を相続したけど、使い道がないため売ってしまいたい方もいらっしゃるでしょう。
農地を相続したり売却したりする時は、通常の不動産売却とは異なる点がいくつかあります。
注意していただきたいことを解説するので、ぜひ最後までご一読ください。
農地を相続した時の流れとは?
もしご両親が農地を所有していて亡くなった場合、相続人に当たる人がその農地を相続するかどうか決める必要があります。
農地を相続しないという選択もできますが、どちらにしろ手続きを行う必要があるでしょう。
ここではまず、農地を相続する場合の手続きをご紹介します。
相続によって農地の権利を取得した場合は、農業委員会へ届出を出すことが義務付けられています。
この届出とは、農地の権利を取得した人が、その旨や内容などを農業委員会へ知らせるための手続きです。
この手続きをすることで、権利取得の効力の発生や効果が生じるわけではないことを押さえておきましょう。
あくまでも、農地の相続をすることを知らせる意味にとどまります。
所有権移転登記は、法務局でする必要があります。
農業委員会で登記は行えませんので、注意してください。
農業委員会は届出を受理した後、相続対象の農地を適正に利用されることを目的として、相続者から農地の管理に関する相談を受けたり農地の借り手を探すお手伝いをしたりします。
農地に関わる様々な手伝いをしてくれると把握しておくと良いです。
相続した農地が所在する市町村の農業委員会へ提出する書類は以下の2つがあります。
1つ目は、農地の相続等の届出書です。
これは、市町村の窓口で入手できます。
2つ目は、相続したことを証明できる書面で、相続登記済みの登記簿謄本などがあるでしょう。
提出者は、相続で所有権移転登記を完了し、または遺産分割協議が済んでいた場合は農地の権利を取得した人、遺産分割の協議中で農地の相続先がまだ決まっていない場合は相続人全員となります。
また、相続人全員で届出を出した後に遺産分割協議にて相続する人が決まれば再度提出する必要があります。
この届出は、農地の持ち主が亡くなったことを知った時点から10ヶ月以内に行う必要があります。
もし、手続きを放置したり虚偽の届出をしたりした場合は、10万円以下の過料に処せられるでしょう。
注意してください。
農地を売却する流れは?
続いては、農地を売却する流れについて解説していきます。
まず初めに、農地を売る際は役所へ事前に相談しましょう。
相談する先は、農地を農地として売却する3条許可の場合は農業委員会で、農地を農地以外に転用して売却する5条許可の場合は都道府県知事または指定市町村長です。
また5条許可の場合、農地転用が可能かどうかを確認するために、事前に役所の農地種別調査を依頼します。
事前に相談し、売ることを許可されるようであれば、不動産会社へ農地の価格査定を依頼しましょう。
農地の価格は、所在地や大きさ、転用の有無、また土壌の状態などによって左右されます。
価格査定後、依頼する不動産会社が決定したらその会社と媒介契約を結びます。
そして売却活動が開始されるでしょう。
農地の売買契約の場合、買主が決定したら停止条件付き売買契約をします。
停止条件付き売買契約とは、条件として設定した事実が発生するまでは、売買のような法律効果の発生を停止させるという契約のことを指します。
つまり、「農地法に基づく許可が取れたら」と条件を設定しその条件が発生したら、本契約の効力が発生するということです。
農地を取引する場合には、農地法に基づく許可は必須です。
許可が下りない限り、売買契約をしたとしても無効になってしまうでしょう。
その一方で、許可を取得するためには事前に買主を決定しておく必要があるのです。
そのため、この際の契約が停止条件付き売買契約になります。
このように買主と売買契約を結んだら、許可の申請をします。
この手続きにはおおよそ1ヶ月ほどかかります。
許可が無事に下りたら、農地の引き渡しです。
農地の引き渡しの場合は、所有権移転登記申請のために農地法の許可指令書を渡します。
最後に、農地の売却をしたことで税金が発生したり特例を利用したりする場合は、確定申告をする必要があります。
忘れずに覚えておいてください。
相続した農地を売却するために何をする?
相続した農地を売却する際には、登記簿謄本の名義を変更する必要があります。
名義の変更には、3つの方法が挙げられるでしょう。
まず1つ目は、遺言によるものです。
これは、遺言書が存在する場合に、遺言書に基づいた農地継承者に名義を変更する方法です。
2つ目は、遺産分割協議による名義変更です。
遺言書がない場合に、この方法が取れます。
この方法では、相続人たちが話し合いを行い、農地を継承する人を決めて名義を変更します。
注意していただきたいのが、決定のためには相続人全員の同意が必要となることです。
併せて遺産分割協議書も作成する必要があるでしょう。
3つ目は、法定相続によるものです。
法定相続の相続人たちで共有している状態のまま名義を変更する方法です。
これは共有物件の売却として取り扱われるため、売却をするためには共有者全員が同意する必要があります。
その上、農地法の許可申請も共有者全員でします。
これらいずれかの方法を用いて、農地を相続した場合は早めに名義変更することが大切です。
ぜひ押さえておきましょう。
相続した農地の税金はどうなる?
農地を相続した場合、相続税が発生します。
相続税の評価方法は農地の所在する場所によって異なるでしょう。
ただ、農地を含む不動産資産や金融資産などの遺産の合計が、基礎控除額を下回る場合は、相続税は課されません。
ここでの基礎控除額とは、600万円に法定相続人の人数を掛け合わせたものと3000万円を足した額です。
加えて、一定の要件を満たせば納税猶予制度も利用できます。
相続税の評価方法を見ていきましょう。
農地にかかる相続税の評価方法は農地の種類によって異なります。
農地の種類は、純農地、中間農地、市街地農地、市街地周辺農地があります。
それぞれを見ていきましょう。
まずは、純農地と中間農地です。
純農地とは農用地区域内に所在する農地などを指し、中間農地とは第2種農地などに当てはまる農地を指します。
これらは倍率方式を採用しています。
倍率方式とは、固定資産税評価額に地域別に定められている倍率を掛けるだけです。
次に、市街地農地です。
市街地農地とは、転用する許可が下りた農地や市街化区域内にある農地のことです。
評価方法は、宅地比準方式を使用します。
計算方法は、その農地が宅地であるとした場合の1平方メートル当たりの価額を1平方メートル当たりの造成費の金額で引いたものに、地積を掛けます。
この計算方法は非常に複雑です。
国税庁のホームページに掲載されている評価明細書を参照すると役立つかもしれません。
チェックしてみてください。
また、市街地周辺農地です。
算出は、宅地比準方式で算出した市街地農地の評価額の80パーセント分です。
まとめ
今回は、農地を相続した場合の流れや手続き、税金などについて詳しく解説しました。
農地の相続や売却は通常の不動産取引とは少し異なりました。
特別な手続きや申請なども必要ですので、しっかりと事前に準備してください。
この記事が参考になれば幸いです。