日本において、空き家問題は社会的な関心事となっています。
多くの空き家所有者は、自己の資産である空き家をどのように扱うべきか、特に売却に際しての税金についての具体的な知識が不足している状況にあります。
空き家の売却を検討する際、税金の計算や法的な手続きは複雑であり、正確な情報を知ることが、適切な売却計画を立てる上で不可欠です。
本記事では、空き家の売却に伴う税金について、明確に解説します。
所有者が直面する税金の問題を理解し、適切な売却戦略を立てるための支援を目指す内容となっています。
税制の専門知識がなくとも理解できるように、各種税金の基礎知識から、特別控除や注意点まで、解説します。
空き家を売却する際にかかる税金とは?
空き家売却における基本的な税金
空き家を売却する際には、まず「所得税」と「住民税」が発生します。
これらは売却から得られる利益、すなわち譲渡所得に対して課税されるものです。
重要な点は、これらの税率が家の所有期間によって異なるということです。
所有期間が5年を超える場合と5年以下では税率が大きく異なり、長期所有の方が税率が低くなる傾向にあります。
この区分は、売却するタイミングを決める上で非常に重要です。
印紙税と登録免許税
売却に伴い必要となるのが「印紙税」と「登録免許税」です。
印紙税は売買契約書に課せられる税金で、契約金額に応じて異なります。
一方、登録免許税は不動産の登記に関連する税金であり、所有権移転や抵当権抹消登記などの際に必要となります。
これらの税金は、売却益があるかどうかに関わらず発生するため、売却計画において考慮する必要があります。
復興特別所得税の影響
2037年12月31日までは、所得税に2.1%の復興特別所得税が上乗せされるため、この期間内に売却を行う場合は、追加の税負担を考慮する必要があります。
この特別税は、東日本大震災からの復興を支援するためのもので、譲渡所得にも影響を与えます。
これらの税金は、売却による利益を正しく把握し、計画的に売却を進めることで、適切に対処できます。
相続空き家の3000万円特別控除とは?
1:特別控除の概要と背景
「相続空き家の3,000万円特別控除」とは、相続によって手に入れた空き家を売却する際、その譲渡所得から最大3,000万円まで控除できる制度です。
この特例は、空き家問題への対策として、2016年の税制改正により設けられました。
この制度の目的は、全国的に増加している空き家の流通を促進し、空き家問題の解消に寄与することです。
控除を受けるためには、いくつかの要件を満たす必要がありますが、これにより空き家を売却する際の税負担を大幅に軽減できるため、所有者にとって非常に有利な制度と言えます。
2:適用期間と要件
特別控除を受けるためには、まず適用期間内に売却を行う必要があります。
具体的には、相続日から3年が経過する日の属する年の12月31日まで、または制度の適用期限内に売却を完了させることが求められます。
2023年12月31日までに譲渡することが原則ですが、この期限は令和9年(2027年)12月31日まで延長されています。
また、本改正には変更が加えられており、これまで譲渡前に耐震改修工事や建物の取り壊しを行うことが条件でしたが、2024年1月以降は、譲渡した日の年の翌年の2月15日までにこれらを行っても特例が適用されることになりました。
3:相続した建物の要件
この特例が適用されるためには、建物自体も一定の要件を満たしている必要があります。
特に重要なのが、相続開始時に被相続人が1人で住んでいたものであること、また1981年5月31日以前に建築された建物であることなどです。
加えて、マンションや複合ビルなどの区分所有建築物は対象外であり、相続時から売却時まで事業や貸付、居住の用に供されていないことも要求されます。
これらの要件は、特例の適用を受けるために非常に重要なポイントです。
4:譲渡する際の要件
売却する際にも、特定の要件を満たす必要があります。
売却代金の合計が1億円以下であること、耐震リフォームを行うか、新耐震基準に適合すると証明された物件の売却であることが求められます。
1981年5月31日以前に建築された建物は旧耐震基準であるため、新耐震基準に適合するためには耐震補強が必要な場合があります。
また、相続人が建物を取り壊して土地を売却する場合も、特例の適用が可能です。
5:他の特例との関係
最後に、この特例は他の税制上の特例との併用が可能かどうかも重要なポイントです。
例えば、居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除や住宅ローン控除などは併用可能ですが、相続財産を譲渡した場合の取得費の特例は併用不可です。
これらの関係を正しく理解し、最大限の税制上の利益を得るための戦略を立てることが重要です。
特例適用時の注意点
空き家特例は、適用条件や利用状況に応じて大きく異なります。
以下のケーススタディを通じて、特例の適用時に気を付けるべきポイントを詳しく見ていきましょう。
1:家屋と土地を両親から別々に相続する場合
家屋と土地の両方を相続している必要があります。
別々に相続した場合、特例の利用はできません。家屋を取り壊して敷地のみを売却するケースでは、特例利用の可能性がありますが、条件をクリアする必要があります。
2:被相続人が老人ホームで生活していた場合
要介護認定を受けて老人ホーム等に入所していた被相続人は、直前に住んでいなくても特例を利用できます。
ただし、該当不動産を事業に用いたり、貸し出したり、他人が住んでいた実態がある場合は、特例は利用できません。
3:小規模宅地等の課税価格の特例との併用
「小規模宅地等の課税価格の特例」を受けた不動産を売却しても、空き家特例を併用できます。
ただし、相続から10か月以内まで所有することが条件です。
4:物件が被相続人との共有だった場合
相続人がすでに所有している部分については、この特例は適用されません。
5:兄弟で空き家を相続する場合
複数の相続人が相続する場合、最大3,000万円の控除が可能です。
但し、2024年1月1日以降、相続人が3人以上の場合は、相続人1人当たりの控除額は2,000万円までとなります。
ただし、どちらかが建物だけを、どちらかが敷地だけをとしてしまうと、特例の条件である建物と敷地を両方相続した場合から外れてしまうため要注意です。
空き家売却の最適なタイミングは?
空き家を売却する際の最適なタイミングとは、一体いつなのでしょうか。
税金面から見ると、所有期間や特例措置が重要なポイントとなります。
1:所有年数による税率の違い
所有期間が5年以下の場合、譲渡所得税は最も高くなります。
一方、5年超や10年超と所有期間が長くなるほど、税率は低下します。
2:特例措置の活用
住まなくなった日から3年目の年末までに売却すると、譲渡所得から最大3,000万円まで控除される特例があります。
さらに、10年超の所有期間があれば税率の軽減措置も適用されます。
3:相続空き家の特別控除
相続した空き家を売却する際は、特別控除の適用が受けられます。
これは「相続開始から3年経過した年の12月31日までに譲渡」することが条件です。
4:注意点
建物を取り壊した場合は、上記の特例措置が変わる可能性があるため、詳細を確認することが重要です。
まとめ
今回は、空き家を売却する際にかかる税金について解説しました。
税金には複数の種類があり、さらに控除についても検討する必要があります。
また、空き家売却における最適なタイミングは、税金面から見ると、所有期間や特例措置を活用することで大きく変わります。
所有年数が短い場合や特例措置を利用できる状況では、早めの売却が望ましいでしょう。
空き家の売却を考えている場合は、今回ご紹介したポイントを踏まえて計画を立てることが重要です。