家を持つと避けられないのが、多額な税金の支払いです。
特に、相続によって空き家を所有することになった方にとって、住んでいない家の税金を支払い続けるというのはかなりの負担になるのではないでしょうか。
一定の条件を満たすことで、その税負担を軽減できるかもしれません。
今回は、空き家をきちんと管理している方と、空き家を売却する方が受けられる税制優遇についてご紹介します。
ぜひ、この記事を参考に優遇制度を利用してみてください。
空き家を管理すると受けられる税制優遇
空き家を所有している場合、固定資産税と都市計画税を支払わなければなりません。
この際、固定資産税は課税標準額×1.4パーセントで求められます。
ここで、所有している土地の上に住宅が建っている場合、誰も住んでおらず空き家の状態であっても「住宅用地の特例」が適用されます。
住宅用地の特例とは具体的に言うと、土地に対する固定資産税の課税標準が3分の1から6分の1に減額されることです。
課税標準額が120万円のケースを例に挙げて考えてみましょう。
更地の場合、1,200,000×1.4パーセントとなり固定資産税は168,000円です。
小規模住宅用地の場合は、1,200,000×6分の1×1.4パーセントの28,000円となり、大幅に負担を減らせます。
一般住宅用地の場合でも、1,200,000×3分の1×1.4パーセントで56,000円となり112,000円も減額されます。
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特例措置の対象外になるケースとは?
住宅用地の特例は空き家を適切に管理している場合のみ、受けられる措置であることを頭に入れておきましょう。
理由としては、2015年に施行された「空家等対策特別措置法」があるためです。
この措置法では、管理が行き届いていないとして特定空き家に指定された場合、翌年以降に住宅用地の特例の対象から除外することが定められています。
つまり、先程取り上げた課税標準額が120万円の空き家の例でいうと固定資産税が168,000円となり、大幅に増額されるということです。
特定空き家の条件
特定空き家に指定される場合、以下のいずれかの状態に当てはまります。
・建物が損壊や倒壊するなど、危険な状態にある
(建物が著しく傾いている、建物の土台が破損している等)
・衛生上、著しく有害となる恐れがある
(悪臭や害虫が発生している、外壁のアスベストが飛散している等)
・管理不十分によって景観を著しく損なっている
(植物が生い茂っている、ゴミが散乱している等)
・周辺地域の保全のため、放置することが不適切である
(犯罪に利用されるリスクがある、害獣が発生している等)
特定空き家に指定されたときの流れ
特定空き家に指定される前にまず、調査が入ります。
調査によって特定空き家に指定されると、自治体から助言・指導が行なわれ、この時点で改善すると指定は解除されます。
しかし、助言・指導が行われてもなお状況が変わらない場合は、勧告がなされて住宅用地の特例対象外となり翌年以降の固定資産税に影響するでしょう。
その後も放置を続けると、勧告から命令に切り替わって従わない場合、50万円以下の過料が科せられてしまいます。
そして、最終的に、自治体は行政代執行に踏み切り、かかった解体費用は所有者に請求されます。
空き家の売却時に受けられる税制優遇
空き家を自分で管理できない方の選択肢として、売却が挙げられます。
空き家を売却した際生じる譲渡所得税にも、税制優遇があることを知っておきましょう。
それは、「被相続人の居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の特別控除の特例」です。
この特例の対象となる空き家であり、売却の条件にも当てはまっていると、譲渡所得から最大3,000万円も控除できる可能性があります。
対象の空き家
・昭和56年5月31日以前の建造物であること
・相続が開始する直前まで、被相続人が居住していたこと
・相続が開始する直前に、被相続人が1人で住んでいたこと
・一戸建て住宅であること
相続開始直前とは、被相続人が亡くなる前を指します。
また、2018年からは要介護認定または要支援認定を受けたために老人ホームに移住していた場合も、一定の条件を満たせば特別控除が受けられるようになりました。
条件とは、家財道具の保管場所や被相続人の外泊・一時帰宅として使用していたことです。
売却の条件
・平成28年4月1日から令和5年12月31日までの期間に売却すること
・相続開始から3年が経過する年の12月31日までに売却すること
・売却価格が1億円以下であること
・売却時に、耐震基準を満たしていること
・相続から売却までの期間、相続人が居住用、賃貸用、事業用としての使用をしていないこと
・売却先が家族や親族でないこと
売却で税制優遇を受け取るために準備するもの
1.譲渡所得の内訳書
売却価格や取得費、譲渡所得などの確認をする書類です。
税務署や国税庁ホームページにある様式をダウンロードして、作成します。
2.登記事項証明書
売却した不動産の建築日や種類、相続による取得であることを確認します。
こちらは、法務局の窓口で取得します。
3.被相続人居住用家屋等確認書
被相続人が相続直前まで住んでいたことを確認するための書類です。
自治体の窓口で取得します。
老人ホームに居住していた場合は、介護保険被保険者証の写しと除籍謄本を添付しましょう。
4.耐震基準適合証明書又は建設住宅性能評価書の写し
建物の耐震性を確認します。
どちらも指定の確認検査機関に発行の申請をします。
現地で調査も行うため、取得まで時間を要することに注意しましょう。
5.売買契約書の写し
売却金が1億円以下であることを確認します。これらは、空き家を売却した翌年の2月16日から3月15日の間に揃えて、相続人本人の管轄の税務署に確定申告書に提出しましょう。
税制優遇が廃止される可能性とは?
2021年度から、神戸市がすべての空き家に対して税制優遇を取りやめることを発表しました。
言い換えると、特定空き家に限らず適切に管理された空き家に対しても、固定資産税の軽減措置が適用されないということです。
これは、空き家増加問題の根本的解決に乗り出すためです。
これまでの制度では、更地にすると優遇措置から外されるため固定資産税が実質的に増額します。
また、解体するのにも費用がかかるわけですから、多くの人がそのまま放置を選ぶということです。
これが、空き家の放置が増加している大きな原因のひとつといえます。
そのため、神戸市だけでなく今後は全国的に、すべての空き家に対して優遇措置をなくす方針へ切り替わる可能性が十分にあるでしょう。
また、3章でご紹介した売却の際の税制優遇にも期限があるので、今まで固定資産税の支払いを軽くするために空き家をそのまま放置していたという方も、今後どうするのが良いか検討することをおすすめします。
まとめ
今回は、空き家を所有している方や売却する方が受けられる税制優遇についてご紹介しました。
特定空き家に指定されて固定資産税の優遇措置から外されないためにも、まずは空き家の管理をきちんと行いましょう。
また、これから空き家を活用する予定のない方は、そのまま放置せずどうするのが家族にとって最適か話し合うと良いでしょう。
売却も視野に入れることになるかと思いますが、その際はぜひ、当サイトで査定価格を調べてみてください。