不動産を売却すると、譲渡所得という所得が発生します。譲渡所得には、所得税や住民税などの税金がかかりますが、その計算方法は非常に複雑です。今回は、不動産を売却する際の税金の計算方法について、基本的な流れとポイントを紹介します。
1. 譲渡所得の金額を算出
まず、不動産を売却したことによって得た収入から、不動産を取得したときにかかった費用や売却時にかかった費用などを差し引いた金額を求めます。これが譲渡所得の金額です。
譲渡所得=収入金額-(取得費+譲渡費用)
収入金額は、通常は売却価格ですが、相続や贈与などで不動産を取得した場合や、相場よりも安く売却した場合などは、評価額というものを用います。
取得費は、不動産を購入したときにかかった代金や仲介手数料などの合計額です。建物の場合は、取得後に行った改築費や修繕費も加えますが、減価償却費相当額というものを差し引きます。
譲渡費用は、不動産を売却するときにかかった仲介手数料や登記費用などの合計額です。
2. 特別控除の有無を確認
次に、譲渡所得から特別控除というものを差し引くことができる場合があることを確認します。特別控除は、自宅や住宅ローンなどに関するもので、条件を満たす場合に限り受けられます。
例えば、自宅を売却する場合には、次の条件をすべて満たす場合に、譲渡所得から3,000万円まで特別控除が受けられます。
(1) 自分が住んでいる家屋を売るか、家屋とともにその敷地や借地権を売ること。
(2) 売った年の前年および前々年にこの特例またはマイホームの譲渡損失についての損益通算及び繰越控除の特例の適用を受けていないこと。
(3) 売った年、その前年および前々年にマイホームの買換えやマイホームの交換の特例の適用を受けていないこと。
(4) 売った家屋や敷地等について、収用等の場合の特別控除など他の特例の適用を受けていないこと。
(5) 災害によって滅失した家屋の場合は、その敷地を住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売ること。
(6)売手と買手が、親子や夫婦など特別な関係でないこと。
※ 詳細は「国税庁のHP」を参照のこと。
特別控除が受けられる場合は、
課税譲渡所得=譲渡所得-特別控除
となります。
3. 税率を適用して税金を計算
最後に、課税譲渡所得に対して税率を適用して税金を計算します。税率は、所有期間や住民税区分などによって異なります。
所有期間が5年以下の場合は、短期譲渡所得となり、所得税は30.63%が適用されます。住民税は、住民税区分によって異なりますが、一般的には9%です。
所有期間が5年超の場合は、長期譲渡所得となり、所得税は15.315%(復興特別所得税を含む)が適用されます。住民税は、住民税区分によって異なりますが、一般的には5%です。
例えば、不動産を取得したときに2,000万円かかり、売却したときに3,000万円になったとします。所有期間が5年以下であれば、
譲渡所得=3,000万円-2,000万円=1,000万円
課税譲渡所得=1,000万円
税金=(1,000万円×所得税率)+(1,000万円×住民税率)
となります。所得税率が30.63%で住民税率が9%だとすると、
税金=(1,000万円×30.63%)+(1,000万円×9%)=396.3万円
となります。
所有期間が5年超であれば、
譲渡所得=3,000万円-2,000万円=1,000万円
課税譲渡所得=1,000万円
税金=(1,000万円×15.315%)+(1,000万円×5%)=203.15万円
となります。
このように、不動産を売却する際の税金の計算は、複数の要素によって変わります。不動産売却を考えている方は、事前に自分の状況に合わせて試算しておくことをおすすめします。また、不動産会社や税理士などの専門家に相談することも有効です 。
まとめ
不動産を売却する際の税金の計算について、以下の3つのステップで説明しました。
・譲渡所得の金額を算出
・特別控除の有無を確認
・税率を適用して税金を計算
不動産売却は大きな取引ですから、しっかりと準備しておきましょう。最近では、不動産市況や政策なども変化していますので、最新の情報もチェックしておくことが大切です。