これは、不動産に関する法律や税金の知識を、物語形式でわかりやすくお伝えするミニドラマです。
登場する人物や団体はフィクションであり、実在のものではありません。
「こんなことなら、もっと早く相談しておけばよかった…」
そう語るのは、神奈川県横浜市に住む佐藤恵子さん(65歳)。
夫・正雄さん(享年70)が3年前に亡くなり、思い出の詰まった自宅で一人暮らしを続けてきました。
しかし最近、「もっと便利な場所のマンションに引っ越したい」と思い始めた矢先、思いもよらない“税金の壁”に直面したのです。

「とりあえず安心」と思っていた配偶者居住権
恵子さんが夫・正雄さんの死後、相続の際に選んだのは「配偶者居住権」という制度でした。
この配偶者居住権を選んだ背景には、家族としてのさまざまな思いがありました。
「これまで通りお母さんには安心して家に住んでほしい。でも、家自体の名義は長男の翔太さん(35歳)にしておきたい」という子どもたちの意向。
そして、相続税の節税効果も見込めるという税理士からのアドバイスもあり、家族全員が納得のうえで配偶者居住権の設定を決めたのです。
この制度によって、家の所有権は翔太さんが相続しましたが、住む権利は恵子さんが持ち続けることができるようになりました。
「やっぱり、長年住んだ家だから、最後までここで暮らしたい。」
そう考えていた恵子さんにとって、配偶者居住権はまさに“安心”の制度に思えたのです。
生活の変化、そして「家を売りたい」という思い
しかし、3年が経つと状況は変わりました。
自宅の老朽化もあり、さらに階段の上り下りが辛くなるなど、体力的な問題も出てきたのです。
そんな中、長女の美咲さん(38歳)が提案します。
「お母さん、駅に近いマンションに引っ越したらどう?」
病院やスーパーも近くなり、孫たちも会いに来やすくなる──そんな未来を想像し、恵子さんも「そろそろ引っ越してもいいかも」と思い始めました。
そして、
「それなら、この家を売って、その資金でマンションを買おう」
と家族の話もまとまりかけた、まさにそのとき──。
税理士からの思わぬ指摘「それ、贈与税がかかるかもしれません」
売却の相談に訪れた税理士から告げられたのは、思いもよらぬ一言でした。
「恵子さん、この家を売るには配偶者居住権を放棄する必要がありますが、それが贈与と見なされる場合があるんです。」
「え?家族なのに贈与になるんですか?」
戸惑う恵子さんに、税理士は続けて説明します。
「配偶者居住権は、お母さんが持っている“財産的な価値”のある権利です。これを手放すということは、その権利分を翔太さんに“無償で渡す”と見なされる可能性があり、そうなると贈与税の対象になることがあるんです。」
思わぬ税金の壁に、家族も悩む
恵子さんはすぐに子どもたちと話し合いました。
「そんな…家族なのに…」と美咲さん。
「普通にお母さんが全部相続してたほうがよかったのかな…」と翔太さんも肩を落とします。たしかに、もし最初から恵子さんが所有権ごと相続していれば、今回のように居住権を放棄する必要もなく、自分の判断だけで家を売ることができたでしょう。
ただし、その場合でも、恵子さんが亡くなった際に翔太さんが相続するときには相続税が発生するため、税金問題を完全に避けられるわけではありません。
つまり、「配偶者居住権を使うべきか、所有権ごと相続すべきか」は、将来どうするかを含めて慎重に考える必要があるということなのです。
配偶者居住権は「万能」ではない
もちろん、配偶者居住権は配偶者の住む場所を守るために重要な制度です。
しかし、 将来家を売却するかもしれない
高齢になって引っ越す可能性がある
といった場合には、配偶者居住権を使うことで後々困る可能性があることも知っておく必要があります。
税理士は最後にこうアドバイスしてくれました。
「相続のときはつい『今』のことだけを考えて決めがちですが、『将来どうしたいか』まで考えて家族で話し合い、専門家に相談しておくことがとても大切ですよ。」
「この家どうしよう?」と悩んだら
恵子さんも今では「もっと早く相談しておけばよかった」と感じています。
同じように
「親の家をどうしよう?」
「相続したけど使っていない実家がある」
と悩んでいる方も多いのではないでしょうか?
そんな時は、まず「不動産売却王」で無料相談してみるのも一つの方法です。
家族だけで悩まず、後悔しないために早めの相談をおすすめします。
まとめ
配偶者居住権は便利な制度ですが、「とりあえず安心」では済まないこともあります。
相続や住まいの問題は、「今」と「将来」の両方を考えて、家族でしっかり話し合い、専門家に相談することが何より大切です。