これは、不動産に関する法律や税金の知識を、物語形式でわかりやすくお伝えするミニドラマです。
登場する人物や団体はフィクションであり、実在のものではありません。
春の気配が漂い始めた2025年4月、日本の住宅基準に大きな転換点が訪れようとしていた――。そんな中、拓也さんと美咲さん夫婦は郊外に新しく家を建てる計画を立てていた。二人にとっては、はじめてのマイホーム。未来の子どもたちと暮らすための、夢が詰まった場所になるはずだった。
「最近ニュースで見たんだけど、これから家を建てるには“エネルギー基準”っていうのに適合しないといけないんだって」と、美咲さんがスマホを見ながら話す。
「え？何それ？省エネの話？」と拓也さん。
実は2025年4月から、日本ではすべての新築住宅に対して「エネルギー消費性能基準」への適合が義務化される。これは断熱性能や一次エネルギー消費量などを数値で評価し、一定の基準を満たさなければ建築許可が下りないというものだ。
「じゃあ、ちゃんと基準をクリアしてる家を建てないと、そもそも住めないってことか…」と拓也さん。
この「基準」は、「断熱等性能等級4」と「一次エネルギー消費量等級4」の2つを指す。
「断熱等性能等級4」は、家の中の温度を外の暑さや寒さから守る力、つまり“断熱性能”を表すもので、数字が大きいほど性能が高い。かつては高性能だったこの等級も、2025年からは最低ラインとして求められる。
一方の「一次エネルギー消費量等級4」は、冷暖房や照明、お湯などに使うエネルギーの量をどれだけ少なくできるか、という“省エネ性能”の基準。こちらも数字が大きいほど省エネな家を意味し、「等級4」が新しいスタート地点となる。
これは、単なる規制ではない。むしろ、これからの家の“資産価値”に直結する大切な基準だった。
省エネ性能が、資産価値を左右する時代へ
政府は2050年のカーボンニュートラルを目指し、2030年までには住宅の省エネ基準をさらに引き上げる方針だ。将来的にはZEH（ゼッチ）水準、つまり「太陽光発電などで使うエネルギーを自給自足できる住宅」が当たり前になる時代が来る。
「省エネ性能が高い家は、冷暖房の効率が良くて、光熱費が抑えられるんだって。しかも、税金の優遇もあるみたい」と美咲さん。
具体的には、住宅ローン減税や不動産取得税の軽減、固定資産税の減額といった優遇措置が用意されている。ただし、これらの恩恵を受けるには、基準をクリアした住宅である必要がある。
「じゃあ逆に、基準を満たしていない家は、税金の優遇も受けられないし、将来売る時の価値も下がるかもね…」
そう、美咲さんの言う通り。住宅の資産価値は、「立地」や「広さ」だけではなく、「エネルギー性能」が新たな評価軸となる時代が始まっているのだ。
安心して住める未来のために
もちろん、エネルギー基準を満たした家には初期費用がかかる。断熱材や高性能な設備の導入で、建築費が高くなることもある。
でも、その分、毎月の光熱費は抑えられ、長期的に見れば家計にも地球にもやさしい。
「快適に暮らせて、子どもにも安心な家を持てるなら、少し背伸びしてでもいい家を建てたいよね」と拓也さん。
こうして二人は、未来の価値を守る家を選ぶ決意をした。
家を建てることは、未来を選ぶこと。これからの時代、エネルギー性能が家の「資産価値」を大きく左右します。
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