これは不動産にまつわるミニドラマです。
難しいイメージのある不動産のニュースや法律・知識を物語形式にすることにより、分かりやすく伝える試みです。
※ 本ドラマは実際の法律や記事に基づいて作成していますが、時期や地域および状況によっては内容が異なる可能性もございます。御注意ならびに御了承くだいますようお願い致します。
※ 本ドラマで出てくる登場人物、団体等は全てフィクションです。
こんにちは、不動産コンサルタントの【F】です。今日は、不在者の財産管理について少し特殊なご相談をいただきましたので、皆さんにもお話ししようと思います。法律の知識も絡んでくる少し専門的な内容ですが、きっと参考になるはずです。
不在者の不動産管理に関するご相談
ある日の午後、【Kさん】という50代の男性がオフィスを訪れました。開口一番、「実は叔父が突然いなくなってしまい、彼の家が放置されていて困っています」と切り出されました。
お話を伺うと、Kさんの叔父さんは数年前から音信不通で、どこにいるかもわからない状況だそうです。叔父さんが住んでいた家も空き家となり、近隣への影響や家の劣化も心配になってきたため、Kさんはなんとか管理したいと考えているとのこと。ただ、叔父さんは誰かに不動産の管理を託す手続きをしておらず、Kさんも手続き方法がわからない状態でした。
不在者の財産管理について民法の規定
「Kさん、不在者の財産管理については民法で定められています。例えば、不在者が自身で管理人を置かなかった場合、身内などの利害関係人が財産の管理について家庭裁判所に請求を行うことができます」と私は説明を始めました。
つまり、不在者が誰かに財産管理を託していない場合、家庭裁判所は利害関係人や検察官の請求を受け、不在者の財産を管理するための処分を命じることができるのです。大切なポイントは、必ずしも不在者の生死が長期間にわたり不明である必要はないということです。Kさんのように、親族が短期間の不明期間であっても、必要に応じて管理を求める手続きを進めることができます。
「7年間の生死不明」の誤解について
ここでKさんは少し不安そうに、「確か、生死不明が7年続かないと家庭裁判所で手続きができないと聞いたことがあるのですが……」と質問されました。
この7年間という期間は、確かに民法に関連するルールではありますが、これは「失踪宣告」という別の手続きに関するものです。失踪宣告(民法第30条)では、ある人が7年間生死不明の場合、法的にその人を死亡したとみなし、相続手続きができるようになります。しかし、これはあくまで「死亡とみなす」手続きであり、財産の管理とは直接関係しません。
一方、今回のような不在者財産の管理については、7年という期間を待つ必要はありません。不在者が見つからない場合、利害関係人が家庭裁判所に申請し、財産管理人を選任してもらうことで、適切な管理が可能になります。
家庭裁判所に相談する重要性
Kさんは「それなら、すぐにでも家庭裁判所で相談できるんですね」とほっとしたご様子でした。突然の失踪など、予期しない事態に対処するには法律の知識が欠かせません。財産管理人の選任は、家庭裁判所の関与が必要ですが、少し手間をかけることで安全で適切な管理ができるようになります。
「これで、叔父の家の管理が少しでも進められそうです」と、Kさんは安心した表情で帰られました。こうして、問題の解決が見え始めると、気持ちも楽になるものですね。