これは不動産にまつわるミニドラマです。
難しいイメージのある不動産のニュースや法律・知識を、物語形式にすることにより、分かりやすく伝える試みです。
※ 基本的に本ドラマは実際の法律や記事に基づいて作成していますが、時期や地域および状況によっては内容が異なる可能性もございますので、御注意ならびに御了承くだいますようお願い致します。
※ 本ドラマで出てくる登場人物、団体等は全てフィクションです。
「あれだけ探して、やっと見つけた理想のマンションがこれか…」と、30代の田中さんは書類を見つめて溜息をついた。
東京都心の中古マンションを購入するため、夫婦で約1億円の住宅ローンを組んだ彼。年収は夫婦合わせて2000万円ほどあるが、頭金や手付金で貯蓄はぐっと減った。「どうしてもこの条件を譲れなかったんだよな」と思い返しながらも、ふと将来への不安がよぎる。
実際、彼のように負債が年収を上回るケースは増加の一途を辿っている。2023年の総務省の「家計調査」によると、世帯平均の負債額は655万円、年収は642万円。負債が年収を超えたのは、調査が始まって以来初めてのことだという。特に、30代などの若い世代にとっては大きな負担だ。
「家計が厳しくなるのは想像できていたけど、今後の金利上昇も考えると、正直ちょっと怖いよね…」と田中さんは苦笑いする。彼が選んだのは「変動型」の住宅ローン。変動型は、金利が将来的に変わる可能性があるローンのことだが、最近のデータによると、住宅ローンを利用している76.9%の人がこのタイプを選んでいる。将来、金利が上がれば返済額も増加するため、リスクを伴う選択肢だ。
そして、さらに不安なのが、変動型を利用している人のうち23.1%が、金利上昇による返済額増加への具体策を「まだ考えていない」という現実だ。田中さんもそのひとりだった。
「手持ちの貯蓄もあまりないし、万が一収入が減ったら…」という考えが頭をよぎる。それに、今のところ賃金は上がっているが、これがどこまで続くかも不透明だ。確かに、2024年の春闘では賃上げの成果が出たが、その一方でインフレが続き、物価も上がっている。生活費が増え、貯蓄はますます厳しくなる。
専門家によれば、住宅ローンが膨らむ背景には、近年の住宅価格の急激な上昇があるという。あるエコノミストは、「賃金の上昇ペースを上回るスピードで住宅価格が高騰しているため、住宅ローンの借入額も増えている」と指摘する。家計の負債の9割以上が「住宅・土地のための負債」に占められており、特に30代~40代の借入意欲は旺盛だ。
「将来、子供ができたらどうなるんだろう」と、田中さんはふと妻との未来を思い描く。しかし、30代という結婚や出産が重なる時期には、返済負担が大きな障害になる可能性もある。実際、2023年の調査では30代世帯の負債額は年収の約2.7倍、貯蓄に対しても2.3倍という厳しい状況だった。
「やっぱり今は、家計全体を見直す時期なのかもしれないな」と、彼は思い直す。ある専門家も、「自らの年収や貯蓄とのバランスを見極め、リスクをどこまで許容できるのか、しっかり見直すべき時期だ」と警鐘を鳴らす。
マンションの契約書を手に、田中さんは深く息を吐いた。「これからの生活、もっとしっかり考えないとな」。住宅ローンという大きな負担を抱えつつ、彼は改めて家計とのバランスを見つめ直す覚悟を固めていた。
不動産の売却や住宅ローンの見直しを検討している方は、ぜひ「不動産売却王」の無料査定サービスをご利用ください。簡単に自動査定ができ、あなたの家計に合った選択をサポートします。