これは不動産にまつわるミニドラマです。
難しいイメージのある不動産のニュースや法律・知識を物語形式にすることにより、分かりやすく伝える試みです。
※ 本ドラマは実際の法律や記事に基づいて作成していますが、時期や地域および状況によっては内容が異なる可能性もございます。御注意ならびに御了承くだいますようお願い致します。
※ 本ドラマで出てくる登場人物、団体等は全てフィクションです。
私はO市で不動産コンサルタントを営んでいる【F】と申します。ある日、クライアントの【Aさん】が来所され、困惑した表情で相談を始めました。「1年半前に終わった増築工事のことで相談があります。最近になって、工事部分に何やら不具合があると気が付いたんです。でも、工事が終わってから1年以上経っているので、【B社】に修補を請求できるのか心配で…」
Aさんが依頼したのは、建物の一部に増築を行うもので、Bさんという業者が材料も用意して工事を請け負いました。ところが完成から1年半が経った頃、増築部分の一部に不具合が見つかったのです。「工事が終わってから時間が経っているけれど、修補をお願いできるものなのでしょうか?」とAさんは心配そうです。
不具合発見後の通知期間とは?
まずAさんに確認したのは、民法が定める「契約不適合責任」に関するルールについてです。
「Aさん、増築部分に不具合がある場合、法律上では不具合を発見してから1年以内に通知すれば修補を請求できます」と私は説明しました。
「えっ、工事が終わって1年以内に通知しなければ請求できないのかと思っていました」とAさんは驚いた様子です。実は、工事が終了した時点ではなく、「不具合を発見した日」が起点になるため、今回のように発見が遅れた場合でも、そこから1年以内に通知をすれば修補請求が可能なのです。
契約内容と特約の確認の重要性
さらにAさんには、「B社への通知は、発見後1年以内であれば民法に基づいて修補請求が可能です」とお伝えしました。ただし、契約書に特約があれば、特約内容が優先されることもあるため、契約内容の確認が重要です。もし、契約に不適合責任の放棄や通知期間の短縮が記されている場合、無条件に特約が適用されるわけではなく、法的に無効とされる場合もあるため、その有効性も含めて確認しておくと安心です。
幸い、Aさんの契約には特約がなかったため、今回のケースでは民法の規定が適用されることになりました。
不具合発見後の具体的な通知方法
Aさんには、不具合発見後の通知に関して、証拠を残す方法を取るようアドバイスしました。法的に問題となった際、通知の記録が残っていないと証明が困難となるため、書面や内容証明郵便などで通知することを推奨しました。口頭での連絡や非公式な方法だと、後で証拠として認められにくくなるリスクがあるため、注意が必要です。
実務でのアドバイス
工事の品質に不具合が見つかった場合は、「発見した日」を起点にして通知期間を考えることがポイントです。さらに、建物の増築や改修工事後には、早めに全体をチェックし、不具合があれば速やかに業者に報告するのが望ましいです。
今回、Aさんは「工事が終了してから時間が経っていたので心配でしたが、まだ請求ができるとわかって安心しました!」と笑顔で帰られました。法的な通知期間や契約内容の確認を怠らず、不具合を発見した際には早期対応を心がけましょう。