これは不動産にまつわるミニドラマです。
難しいイメージのある不動産のニュースや法律・知識を物語形式にすることにより、分かりやすく伝える試みです。
※ 本ドラマは実際の法律や記事に基づいて作成していますが、時期や地域および状況によっては内容が異なる可能性もございます。御注意ならびに御了承くだいますようお願い致します。
※ 本ドラマで出てくる登場人物、団体等は全てフィクションです。
私はO市で不動産コンサルタントを営んでいる【F】と申します。とある夏の日、ある男性が相談に訪れました。名前を【Aさん】としておきましょう。Aさんは最近、築年数の経った自宅の増築工事を頼んでいたそうです。新しい部屋を増やすために、工事請負契約を【Bさん】という請負業者と結んだとのこと。
契約では、「建物の独立性を保たない、つまり既存の建物の一部として増築部分を仕上げること」という条件がありました。Aさんとしては、家族が増えたために少しでも居住スペースを広げたいという要望があったのです。そしてBさんも約束通りに、3ヶ月間の工期で増築工事を無事に完了しました。ここまでは順調です。
増築後に見つかった問題点
ところが、工事が終わった後にAさんが新しく増築された部分を見て驚きました。どうもその部分の品質に問題があるように思えたのです。具体的には、増築部分の壁材や塗装にムラが見られるとのこと。AさんはすぐにBさんに問い合わせましたが、Bさんは「工事には問題がなかったはず」と返答したそうです。
実は、この増築部分に使用された材料の一部は、Aさんが自ら提供したものでした。Aさんとしても、信頼していた業者から取り寄せた材料だったため、品質には自信があったようです。しかし、この材料がどうやら原因で、増築部分が「契約不適合」に該当する状態になってしまった可能性が高いということでした。
法的な視点から見る「契約不適合」とは?
Aさんの困り顔を見て、私は増築工事に関する「契約不適合責任」について説明しました。「契約不適合」というのは、簡単に言えば、工事や製品が契約で期待される品質や性能に達していない状態を指します。この場合、Aさんが提供した材料が原因で品質に問題が発生しているということですから、少々難しいケースです。
Aさんは続けて、「Bさんに修補をお願いすることはできないんでしょうか?」と聞いてきました。ここで、私は民法の規定や判例に基づいた説明をしました。
「提供した材料」による不適合の場合の民法上のルール
民法では、請負契約における「契約不適合責任」に関するルールが定められています。ですが、今回のように「材料の提供者」がAさん、つまり依頼主側である場合、その責任の範囲が変わることがあります。
Aさんが提供した材料の性質によって、増築部分の品質が「契約不適合」と判断されたとしても、Bさんにはその修補を求められない可能性があるのです。これは、BさんがAさんから提供された材料に関して、その不適当さを知らずに工事を行い、きちんと仕上げた場合には、AさんがBさんに修補請求することができないと民法に基づいているからです。
Aさんは納得した様子でしたが、少しがっかりした表情も浮かべていました。「やっぱり自分が提供した材料が原因だと、修補は難しいんですね」とポツリ。工事自体は確かにBさんの責任の範囲内ですが、Aさんが材料の選定に少しでも疑問を持っていれば、もしかしたら結果は違っていたかもしれません。
最後に
Aさんとのやり取りを通して、私は改めて「契約不適合」に関する理解が深まりました。不動産や建築関連の契約は、さまざまな法律や規定が絡んでいます。今回のケースも、当事者それぞれの役割や責任がしっかりと定められていたため、Aさんもスムーズに理解することができたようです。