これは、不動産に関する法律や税金の知識を、物語形式でわかりやすくお伝えするミニドラマです。
登場する人物や団体はフィクションであり、実在のものではありません。
陽子さんが父の実家に足を踏み入れたのは、実に7年ぶりだった。風雨にさらされた木の扉は少し軋み、庭には雑草が生い茂っていた。かつて祖父母と語り合った縁側も、今では静寂の中にあった。父が他界してから、誰の手にも渡らず、ただ時間だけが流れていたこの家。ふと陽子さんは思った。
「このままじゃ空き家になってしまうわ…」

相続について兄妹で話し合う機会もなかった。仕事や家庭の忙しさにかまけて、どう扱うべきかを考える余裕もなかったのだ。そんな矢先、テレビから流れてきたのが「相続登記2024年4月から義務化されてから、1年が経過」というニュースだった。
義務化された相続登記。その背景には、深刻な空き家問題がある。実際、全国に存在する空き家は900万戸を超え、30年前の約2倍に増加したという。なぜこうなってしまったのか。それは、相続した土地や家の登記をしない人が多かったためだ。住宅ローンを組んで家を買うときには必ず登記を行うが、親の土地を受け継ぐ場合、その必要性を感じない人が多いのが現実。結果として「誰の土地なのか分からない」という状態が各地で発生し、空き家が放置されてきた。
2024年4月から義務化された相続登記は、この問題を解決するための一歩となった。有識者によれば、この制度により社会の意識も変わってきたという。「相続登記はしなければならないもの」という考えが徐々に浸透し、法務局や司法書士会の広報活動も功を奏している。確かに、制度に対して不安を抱える人もいるが、実際には多くの人が前向きに対応しはじめているのだ。
とはいえ、登記手続きには多くの課題が残されている。相続人が複数いる場合、誰が土地を引き継ぐかを早めに決めないと、後々その相続がネズミ算式に広がってしまう。兄と妹が2分の1ずつ共有で登記しても、どちらかが亡くなればまた新たな相続人が登場し、権利関係がさらに複雑になる。
この課題を乗り越えるには、登記と同時に「遺言」の重要性も理解しておく必要がある。相続のトラブルを防ぐ最善策は、被相続人が遺言で不動産の行き先を明確にしておくことだ。公証人が作成する「公正証書遺言」や、自分で書く「自筆証書遺言」があるが、後者の場合でも法務局に保管してもらう制度があり、1件あたり3900円で安心を得ることができる。親が元気なうちに準備しておけば、遺族がスムーズに相続登記を行えるのだ。公正証書遺言は、専門家(公証人)が作成するため形式不備の心配がなく、自筆証書遺言は費用が安く手軽だが、書き方に注意が必要である。
制度の運用についても、柔軟性がある。登記しなかった場合、法律では「10万円以下の過料」とされているが、すぐに罰則が科されるわけではない。まずは催告書が郵送され、正当な理由があれば対象外となる。あくまで透明で公平な運用が重視されている。法務局の窓口では、相続登記やその準備段階に関する相談も増加しており、社会の関心と行動の変化が感じられる。
陽子さんも、兄と妹を誘って話し合いの場を設けた。そして3人で決めたのは、兄がこの家を引き継ぎ、売却するという選択だった。名義変更の登記も兄の名前で行い、売却には「不動産売却王」の無料査定サービスを利用することにした。スマホから簡単に申し込めて、不動産会社ともスムーズにつながるこのサービスに、陽子さんは「もっと早く動けばよかった」と感じたという。
もし、あなたの実家や土地が相続されたまま手つかずになっているなら、そろそろ本格的に向き合う時期かもしれません。「相続登記をどうすればいいか分からない」「名義が親のままで放置されている」——そんな状況に心当たりがある方は、まずは登記の状況を確認し、必要であれば名義変更の手続きを進めてみましょう。そして、所有者として正式に登記が完了した後には、その不動産をどう活用するかを考えるステップに移ることができます。売却を視野に入れている方は、「不動産売却王」での無料査定サービスを活用して、現実的な選択肢を知るところから始めてみてください。