これは、不動産に関する法律や税金の知識を、物語形式でわかりやすくお伝えするミニドラマです。
登場する人物や団体はフィクションであり、実在のものではありません。
実家に残る思い出と、直面した現実
「最近、実家どうしてるの?」
兄の何気ない一言が、僕の心にぽっかりと穴を開けた。
父と母が施設に入ってから、ちょうど一年が経つ。僕たちが育った家は、今や誰も住まない“空き家”になっていた。
リビングで家族が笑い合った時間、夏の縁側でスイカを食べながらうとうとした昼下がり、年末にこたつを囲んで紅白歌合戦を見ていた夜——その一つひとつが、僕にとってかけがえのない思い出だ。
けれど現実は、そんな感傷を待ってはくれない。
ある日、近所の方から「庭木が伸びていて迷惑になっている」と連絡が入った。慌てて様子を見に行くと、雑草は膝の高さまで伸び、植木は隣家の敷地にまで伸びていた。郵便ポストには大量のチラシや封筒が押し込まれ、まるで「ここには誰も住んでいません」と告げているようだった。
「このままじゃ、誰かに悪用されるかもしれない」
そんな不安が、現実味を帯びて僕の胸に重くのしかかってきた。

僕が実家を守るために始めたこと
このまま放置すれば、思い出の家が誰かに壊されてしまう。そう思った僕は、できることから始めることにした。
まず、庭の植木をすべて撤去し、敷地全体を外からでも見渡せるように整備。
防犯の基本は「見えること」だと聞いたことがあった。不審者の入り込む死角をなくせば、犯罪のリスクも下がるだろうと考えた。
郵便物についても定期的にチェックすることにした。
同時にインターネットで、空き家にまつわる犯罪リスクについても調べた。
特殊詐欺や密輸の荷物の受け取り場所として空き家が使われるケースがあると知り、背筋がぞっとした。
実家も、放っておけば犯罪者にとって格好のターゲットになる可能性がある——そう実感した。
手放すという決断と、そのきっかけ
思い出が詰まった家だからこそ、誰にも踏みにじられたくない。けれど、一方で「いっそ売ってしまったほうがいいのかもしれない」という思いも、少しずつ頭をもたげてきた。
実家が空き家になってから1年が経過し、「居住用財産の3,000万円特別控除」の適用期限も残り2年を切っている。
この制度を活用すれば、売却による譲渡所得にかかる税金を大幅に抑えられる可能性がある。
※税制に関する内容は2025年4月時点の情報をもとにしています。実際の適用については、税理士など専門家に必ずご相談ください。
悩んでいたとき、ネットで見つけたのが「不動産売却王」というサービスだった。
オンラインでの無料査定が可能で、必要に応じて地元の不動産会社と連携しながら売却をサポートしてくれる。
「自分ひとりで何とかしなきゃ」と思っていた僕にとって、これは心強い味方だった。
未来へつなぐ、僕の決意
大切な場所だからこそ、無防備にはしておけない。
この家を誰かが引き継いで、新しい時間を紡いでくれるなら、それは決して「手放す」ことではなく、「つなぐ」ことなのかもしれない。
僕は、静かに第一歩を踏み出すことにした。
父と母の思い出を守るために。
そして、未来へこの場所をつなぐために——。
あとがき
空き家の問題は、いつか誰もが直面するかもしれない家族の課題です。
「まだ大丈夫」と思っていても、時間はあっという間に過ぎていきます。
思い出を大切にすることと、現実に向き合うこと——どちらも、きっと間違いじゃない。
僕の体験が、同じような立場の誰かの背中を、少しでもそっと押せたら嬉しいです。